解説記事 — フレーズフレーズミー

冠詞と名詞の形

this・that・the・it の違い|「この」「その」「あの」の英語の指し分け

30秒でわかる

「この=this」「あの=that」は話し手からの距離で指さす言葉。「その=the」は距離ではなく相手もどれのことか分かっているしるし。そして一度話に出たものをもう一度受けるときは it です。迷ったら「日本語の指示語(この・その・あの)はどれか? 指示語がなく、2回目に出てきただけなら it か the」と考えてください。

×That game was so fun.(「その試合」)
The game was a lot of fun.

まず、実際の間違いを見てください

次の3つは、当サービスの人手添削で実際に繰り返し指摘された誤答です(回数は同じ間違いが添削された実測値)。

例文: 頂上が雪で覆われているあの山は、僕らが昨年の夏登った山です。

×The mountain whose top is covered with snow is the one we climbed last summer.(「あの山は…」)128回
That mountain whose top is covered with snow is the one we climbed last summer.

日本語が「あの山」と遠くを指さしているので、that で指すのが忠実です。the mountain は「以前に話題に出たあの山」なら使えますが、初めて指さす場面では that のほうが自然です。

例文: 重要なのは、手紙の差出人の目的は何かということだ。

×The important thing is what the purpose of the sender of this letter is.(「手紙の差出人」)46回
The important thing is what the sender of the letter is trying to achieve.

問題文には「この手紙」とは書かれていません。日本語に指示語がないのに this を足すと、原文にない「この」という意味が加わってしまいます。話に出ている特定の手紙なので the letter です。

例文: その試合はとても楽しかった。

×That game was so fun.(「その試合は楽しかった」)34回
The game was a lot of fun.

日本語の「その」は、そこにあるかどうかに関係なく、話し手と聞き手の間に共通の了解があるものを指します。英語でこれにあたるのは the。that にすると「あの試合」と遠くを指さす意味になります。

第40位

this・that・the・it の指し分けのミスは、よくある誤り全222タイプの中で第40位。当サービスの人手添削12年分で2,860回指摘されました。「この」を the にする・書かれていない this を足す、の2方向で起きるのが特徴です。

なぜ間違えるか——日本語のクセ

日本語の「この・その・あの」は、こ(自分の近く)・そ(相手の近く)・あ(両方から遠く)という距離の3段階です。ところが英語の指示語は this(近く)と that(遠く)の2段階しかなく、「そ」にちょうど対応する言葉がありません。ここに空白があるため、「その」を that と訳す誤りが生まれます。実際には、日本語の「その」の多くは「どの試合か、お互い分かってるよね」という共有の合図であって、距離の話ではありません。英語でその役割を担うのは指示語ではなく the です。

逆方向の誤りもあります。the は日本語に訳さないことが多い(the letter=「手紙」)ので、「この・その」と訳したくなる名詞には全部 this を付けたくなる。しかし this は「話し手が手元のものを指さしている」という強い意味を足す言葉なので、日本語に「この」がないのに this を書くと、原文にない意味が加わって減点されます。和文英訳では「日本語の指示語をそのまま写す」のが原則です。

話し手 聞き手 this ▢ 話し手の手元。「この」 that ▢ 遠くを指さす。「あの」 the ▢ 両者が同じ光の中に見ている。「その」 it 直前に出たものを、指ささずに受ける this・that は指さし、the は「共有ずみ」の合図、it は繰り返しの身代わり
this・that は話し手が指さす言葉(近い・遠い)。the は話し手と聞き手が同じ対象を特定できる合図。it は一度話に出たものの身代わり。

図の内容を表にするとこうなります。

英語日本語働き
this +名詞この〜話し手の手元・目の前を指さすthis cafe(このカフェ)
that +名詞あの〜離れたところを指さすthat mountain(あの山)
the +名詞その〜(訳さないことも)相手もどれか特定できる合図the game(その試合)
itそれ直前に出た名詞をそのまま受けるIf I had missed it(それに乗りそこねていたら)

the そのものの働き(play the piano・the U.K. など指示語と関係ない用法)は定冠詞 the の記事で扱っています。この記事では「日本語の指示語をどう写すか」に絞ります。

こう考える——書くときの判断手順

  1. 日本語に指示語(この・その・あの)があるかを見る——なければ this・that は使わない。2回目に出た名詞なら the か it で受ける
  2. 指示語があるなら、「この」→ this、「あの」→ that とそのまま写す。「この」を the にすると「その」の意味に弱まり、原文に忠実でないとして減点されます(例:「この問題は議論する価値がある」→ This matter is worth discussing.)
  3. 「その」→ the が基本——「その」は距離でなく共有の合図なので、that(あの)でも this(この)でもなく the。「その本」は the book です
  4. 質問への返事と繰り返しは it ——Is that your bag? への返事は No, it is not.(that で受け直さない)。前の文に出た the train をもう一度言うときも it で受けられます

ここまでは同じ、ここからは別

この指し分けには「どちらも正解」の幅があります。まず the と this のどちらでも英文として正しい場面は多い——「この計画を実行する」を carry out the project と書いても文法的には正しい英語です。減点されるのは英語が壊れているからではなく、「この」と指さしている原文のニュアンスが落ちるからです(和文英訳ならではの基準です)。次に「あの山」の The mountain は、以前に話題に出た山を指すなら正しい英語で、当サービスでも誤りでなく軽い減点リスク(初出の場面では that が自然)としています。また、2回目に出た名詞を the +名詞で繰り返すのも it で受けるのも両方正解です——If I had missed the express. と If I had missed it. は同点です。最後に、it には「天候・時刻の主語」という別の専用の仕事もあります(It was dark and cold last night.)——これは指し分けではなく形の決まりごとなので、丸ごと覚えてください。

まとめ——書いたあとのチェック

この間違い、自分もやるか試してみる

この記事で見た「その試合はとても楽しかった。」を、実際に英語で書いてみてください。「その」を the で写せるか——this でも that でもないことが、そのまま試される問題です。書いた英文は AI がその場で採点します(登録は不要です)。

「その試合はとても楽しかった。」を英語で書いてみる登録なしで、この1問をAIが採点します

データについて: 本文の回数・割合は、フレーズフレーズミーの人手添削データ12年分の集計値です(添削と誤りタグの照合 655,994回のうち、本記事のタグ「this, that, the, it の違い」への照合が 2,860回・0.4%。集計 2026-08-14)。誤答例の「◯回」は、同じ間違いが人手添削と照合された回数です。誤答例はいずれも実際の学習者の答案に現れた文で、個人が特定できる情報は含みません。

著者: 株式会社コンテンツアンドシステムズ(人手添削18.4万件・採点基準416問を運営する、ITと教育の融合をミッションとする会社です)。データの出どころと記事の作り方は運営者とデータについてをご覧ください。

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