解説記事 — フレーズフレーズミー

前置詞・時の表し方

前置詞 through の使い方|「壁の向こうから聞こえる」が over でも behind でもない理由

30秒でわかる

through の中心イメージは「中を通り抜ける」です。トンネル・森・壁など、何かの内部をくぐって反対側へ出る動きを表します。「壁の向こう側から音が聞こえる」は、音が壁を通り抜けて耳に届くので through the wall。over は「上を越える」、behind は「後ろにある」という位置で、通り抜けの意味はありません。

×I can hear something over the wall.
I can hear something through the wall.

まず、実際の間違いを見てください

次の2つは、当サービスの人手添削で実際に繰り返し指摘された誤答です(回数は同じ間違いが添削された実測値)。

例文: 静かに!壁の向こう側から物音が聞こえてきます。

×Be quiet! I can hear something over the wall.10回
Be quiet! I can hear something through the wall.

over は何かの上を乗り越えてやってくるイメージです。壁の上部が空いていてそこから聞こえるなら over もありえますが、ふつう「壁の向こうから」の音は壁そのものを通り抜けて届きます。だから through です。

例文: 静かに!壁の向こう側から物音が聞こえてきます。

×Be quiet! I hear a noise from behind the wall.9回
Be quiet! I hear a noise through the wall.

behind は「壁の後ろに(ある)」という位置を指すだけで、音がどう届いたかを言えていません。「壁の向こう側から」=「壁を通して」と考えて、通り道を示す through the wall とします。

第181位

「前置詞 through」のミスは、よくある誤り全222タイプの中で第181位。当サービスの人手添削12年分で66回指摘されました。「向こう側から」を over や behind で書いてしまう間違いに集中しています。

なぜ間違えるか——日本語のクセ

日本語の「壁の向こう側から」は、音源の位置(向こう側)と出どころ(〜から)を言うだけで、音がどうやって届いたか(壁をすり抜けて)は言いません。だから位置の直訳で behind(後ろ)や over(越えて)に手が伸びます。英語の前置詞は訳語ではなく動きの経路をどう見ているかで選びます——このことは in の記事(囲いの中)・at の記事(点)・to の記事(到達の矢印)で見たのと同じ原則です。through が担当するのは「内部を通り抜ける経路」で、透明人間が壁をすり抜けるように、音・光・視線が障害物の中をくぐって届く場面まで広がります(hear through the wall/see through the window)。

through = 中を通り抜ける over = 上を越える behind = 後ろにある
through は障害物の中を貫く矢印、over は上を越える弧、behind は後ろにいるだけの点。動きの経路が違う。

図の内容を表にするとこうなります。

前置詞イメージ
through中を通り抜けるhear a sound through the wall(壁越しに音が届く)
over上を越えるjump over the wall(壁を飛び越える)
behind後ろにある(位置)hide behind the wall(壁の後ろに隠れる)

こう考える——書くときの判断手順

  1. その動き(音・光・移動)は何かの内部をくぐって反対側へ抜けるか——抜けるなら through(walk through the forest/hear through the wall)
  2. 上を越えて行くなら over、単にその後ろにあるだけなら behind——経路ではなく位置の話なら through は使わない
  3. 「〜の向こうから聞こえる・見える」は、音や視線が障害物を通り抜けて届くと見て through——「〜から」につられて from だけで済ませない

ここまでは同じ、ここからは別

through がいつでも「向こう側」を表すわけではありません。実際に上を越えて届く場面——たとえば塀の上の隙間から聞こえてくる——なら over が正しくなります。基準はその文で経路をどう見ているかです。また through には「終わりまで通り抜ける」から広がった用法(all through the night=一晩中、through a friend=友人を通じて)もありますが、まず空間の「通り抜け」を固めれば、これらは同じイメージの延長で読めます。

まとめ——書いたあとのチェック

この間違い、自分もやるか試してみる

この記事で見た「静かに!壁の向こう側から物音が聞こえてきます。」を、実際に英語で書いてみてください。through と over・behind の使い分けがそのまま試される問題です。書いた英文は AI がその場で採点します(登録は不要です)。

「静かに!壁の向こう側から物音が…」を英語で書いてみる登録なしで、この1問をAIが採点します

データについて: 本文の回数・割合は、フレーズフレーズミーの人手添削データ12年分の集計値です(添削と誤りタグの照合 655,994回のうち、本記事のタグ「前置詞 through のイメージ(意味と使い方)」への照合が 66回・0.01%。集計 2026-08-14)。誤答例の「◯回」は、同じ間違いが人手添削と照合された回数です。誤答例はいずれも実際の学習者の答案に現れた文で、個人が特定できる情報は含みません。

著者: 株式会社コンテンツアンドシステムズ(人手添削18.4万件・採点基準416問を運営する、ITと教育の融合をミッションとする会社です)。データの出どころと記事の作り方は運営者とデータについてをご覧ください。

← 解説記事の一覧フレーズフレーズミーをはじめる